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実案件から学んだ、飲食店の訪日インバウンド戦略の考え方をまとめてみました。

#マーケティング

こんにちは、World Sceneのマーケ担当です!

今回は、コロナ禍後に外国人の訪日需要が高まる中で、これからインバウンド集客を行いたい
以下のような企業、飲食店を対象に記事を執筆しました。

  • これからインバウンド対策を始めたい、何から始めたらいいのかわからない
  • 戦略的にインバウンド施策を実施したい

実際にお手伝いしている大手飲食店さんに実施した内容を例に、具体的な戦略の考え方や施策例ついてお伝えできたらと思います。インバウンド戦略を考える上で、少しでもヒントになれば幸いです。

訪日インバウンドマーケティングの重要性

コロナ禍後の2023年、日本のインバウンド市場は急速な回復を辿っています。日本政府観光局(JNTO)のデータによると、コロナ禍前の2019年の年間訪日外国人観光客数は約3,200万人だったが、2023年は2,506万人と約8割程度の回復が見られました。

2024年はコロナ禍前を超えることが予測されており、訪日需要の増加は今後も続いていくと考えられます。

飲食店としては、インバウンド対策の重要性が増しており、対策の有無で集客効果に差が生じることが予測される為、今のうちにしっかり取り組んでおくことが非常に重要です。

なぜインバウンド戦略が必要なのか?

前述の通り、訪日外国人向けの集客施策を行う飲食店が増えているため、ただ集客施策を行うだけでは効果が期待しにくい状況にあります。店舗地域に訪日する外国人の属性や食文化、日本食に何を求めているのかを深く理解し、戦略的に魅力を訴求をすることで、多くの訪日外国人観光客を集客することができます。

訪日インバウンド戦略の全体像

飲食店で訪日インバウンド戦略を考えるにあたり、全体像を把握し、各要素で理解を深め、戦略や具体施策を定めることが重要です。

<実例の店舗情報>
業態:レストラン店舗規模:福岡県を中心に九州に約50店舗を展開抱えていた
課題:まったく手をつけられていなかった、インバウンド対策を始めたい

以下より、実例をもとに各要素の説明をしていきます。

業界分析フェーズ

環境分析フェーズでは、対象地域における訪日外国人のインバウンド需要や属性、情報収集方法、食へのニーズを整理します。ターゲットを定めるために、地域の訪日外国人の解像度を高めていきます。

地域に訪日外国人はどれくらい訪れているか【環境分析】

まずは地域にどれくらいの訪日外国人が訪れているのか調査をします。
県や観光協会が発行するインバウンド情報や訪日メディアなどから、コロナ禍前後や直近の訪日外国人観光客データを収集しましょう。

<福岡県の訪日外国人観光客データ>
2019年(コロナ禍前)の外国人宿泊者数:4,262,000人
2023年(コロナ禍後)の外国人宿泊者数:4,737,990人
成長率:111%上昇

地域の訪日外国人はどんな人か【環境分析】

訪日外国人の年齢、性別、国籍などの属性データを把握しておきましょう。
国別の割合などから国籍のボリュームゾーンと特定し、うっすらと狙うべきターゲット像が見えてきます。

<福岡県の訪日外国人属性データ>
◼️国籍割合

◼️来訪数が多い、訪日韓国人の特徴
そこからターゲットになり得る地域の特徴を深掘りしていきます。
例えば、福岡県の訪日韓国人の場合、

  • ソウルから1時間30分距離も近く、手軽な旅行先として親しまれている
  • 20代〜30代の若者が6割
  • 7割以上がリピーター
  • 8割が個人手配の旅行

などの情報がネットから収集でき、「若者を中心に気軽に行ける海外」として福岡が利用されていることがわかります。これらはターゲットや戦略を定める手掛かりになってきます。

訪日外国人はどのように旅行先・飲食店を探しているか【環境分析】

訪日外国人が旅行先や飲食店を探す際には、「旅マエ」と「旅ナカ」でツールを使い分けて意思決定を行なっていることが一般的です。どのツールに施策を実施すべきかを明確にするために、訪日外国人の検索体験を整理していきます。

<検索体験>

旅マエと旅ナカの検索体験から食の情報収集に影響が大きいツールに対して施策を実行することで効率的な集客を行うことができます。自社で行えている施策と行えていない施策を整理し、実行施策を選定していきましょう。

<情報収集方法>
地域別に意思決定に貢献するツールが違うため、ターゲットになり得る地域の情報収集方法は調べておきましょう。この情報から施策の実行優先度が変化してきます。

◼️全国籍

  • 口コミ
  • SNS(Instagram / youtube)

◼️東アジア地域

  • SNS(Instagram / youtube)
  • 個人ブログ(NAVER)

訪日外国人は日本食に何を求めている・何を食べているか【環境分析】

<日本食に何を求めているか>
地域によって食の好みや文化が違うため、日本食へ何を求めるかが違ってきます。
地域別に把握しておくと、地域別の飲食店選びの基準が見えてきます。

◼️アジア圏

  • 日本食を食べたい(肉・魚・麺)
  • ご当地メニューが食べたい(B級グルメ)

◼️欧米豪圏

  • 日本食を食べたい(寿司・麺・肉)
  • 日本食体験を通して日本文化を体感したい
  • 作法を知りたい

<日本食に何を求めているか>
訪日外国人に何の日本食がたべられているかを確認することで、大まかですが、料理カテゴリーの需要数を割り出すことができます。

計算式:地域の訪日外国人観光客数×料理カテゴリーの割合=大まかな料理カテゴリーの需要数

計算しておくことで、定量的に判断しなくてはいけないシミュレーションなどを立てる場合に使えます。

競合店舗のインバウンド対策状況を確認する【競合分析】

上記で述べた訪日外国人の検索体験に沿って、各ツールで地域や料理ワード、またその掛け合わせを多言語で検索することで、競合のインバウンド対策状況を確認することができます。

以下のアプリやツールで、競合の店舗情報や投稿内容が多言語対応されているかをチェックしてみましょう。

  • googleマップで検索 →ビジネスプロフィールが検索言語と対応しているか
  • 旅行・グルメ口コミアプリで検索 →多言語で掲載されているか
    L おすすめの確認ツール:TripAdvisor / 大衆点評 / Open Rice / Yelpなど
  • SNSで検索 →多言語用のハッシュタグや投稿内容になっているか

ターゲット設定(基本戦略)

このフェーズでは、具体施策に落とすためのターゲットの設定をしていきます。

勝ち筋となる市場がどこにあるかを定めることが重要となり、「誰に対してアプローチすべきか」を明確にすることで、訪日外国人に響かない一方通行な施策や訴求を回避できるため、施策の精度が向上します。

以下は一例ですが、市場を4象限で整理すると非常に分かりやすいです。

環境分析の情報をもとに縦軸を地域、横軸を日本食に求めるものと示しています。

見込み客のボリューム数から、「B級グルメを求める東アジア地域の訪日外国人」が第一ターゲットとなり、次点に「体験を求める東アジア、欧米豪地域の訪日外国人」が第二ターゲットとなり、需要が大きいところから狙っていく戦略を定めることができます。

具体施策

最終フェーズとして、前述で定めたターゲットを集客するための具体施策を検討していきます。

検索体験でもお話ししましたが、食の情報収集に影響する施策であることを前提に、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の行動別に施策を考えていきましょう。

お店へ集客するための行動別の対策優先度ですが、まずはお店を認知させ、来てもらわなければいけないので、「旅マエ=旅ナカ>旅アト」となります。

【無料】インバウンド集客施策5選

下記にまずは無料でできるおすすめ施策を記載します。

自社のリソースと相談しながら、ぜひ対応してみてください。

<1.MEO対策>
MEOとは、Map Engine Optimization(マップエンジン最適化)の略称です。
検索エンジンから「地域×料理名」などで検索された際に上位表示されるように対策していきます。
ビジネスプロフィールを充実させ、多言語対応させることが重要です。

<2.旅行・グルメ口コミサイト対策>
それぞれの地域で使われている主要な旅行・グルメ口コミサイトへ掲載することで訪日外国人の目に触れる機会が増えます。
また、店舗で口コミへの書き込みを促すことで、口コミからさらなら集客が期待できます。

以下、おすすめの旅行・グルメ口コミサイトになります。

  • TripAdvisor 
    利用地域:世界48か国
  • 大衆点評
    利用地域:中国・韓国
  • Open Rice
    利用地域:台湾、香港、タイ、シンガポール
  • Yelp
    利用地域:欧米

ターゲット地域によって使い分けは必要です。

<3.県・地域のインバウンド施策に参加>
県や地域で行うインバウンドへの取り組みに参加することで、集客の間口を広げることができます。
地域で取り組みを行っているかぜひチェックしてみてください。

事例の対象地域である福岡県では、福岡県の観光情報サイトに掲載される「インバウンド協力店」の募集をしていました。

<4.SNS運用>
訪日外国人のSNSでの情報収集は、Instagramとyoutubeを見ていることが多いです。
興味を引くようなコンテンツ内容を企画し、多言語対応させるカタチで継続的に投稿してみましょう。

<5.店内インバウンド対策(看板・メニュー・人材)>
店頭や店内のインバウンド受け入れ体制を整えることも忘れてはいけません。
看板、メニュー、外国語対応ができるスタッフの雇用、マニュアル作成など、満足してもらえる体験を提供するための準備が必要です。

まとめ

本記事では、実案件をベースにインバウンド戦略の全体像から具体的施策に至るまでを解説しました。分析、ターゲット設定、具体施策の選定の大枠に沿って戦略的にインバウンド施策を実施することで、効率よく訴求でき、集客効果が期待できます。

もし進める上で、更に詳しく知りたい方は、弊社へお問い合わせいただければと思います。
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