Home Contents これから地方中小企業が取り組むべきブランド戦略とは?実践ステップと事例をご紹介!
これから地方中小企業が取り組むべきブランド戦略とは?実践ステップと事例をご紹介!
こんにちは。株式会社World Scene代表のあらたけです。
私たちは福岡市を拠点に、ブランディング、マーケティング、クリエイティブ制作を手掛けています。少し私自身の話をさせてください。弊社が「ブランドパートナー」として事業を展開しようと決めた背景には、創業前までの経験に詰まっています。
これまで広告畑で9年間、約2000社以上の企業に携わり、ナイトレジャーから地域の町中華、大手チェーン、医療系、建設系、SaaS、そして上場企業まで、業界や地域にとらわれず幅広くサポートしてきました。この経験は私にとって何よりの財産です。
また、広告商材も幅広く、雑誌広告から最新のHRテックまで、あらゆる媒体とトレンドを手掛けてきたことで、「あらたけに聞けば間違いない」という信頼をいただけるようになったと感じています。本当にありがたいことです。しかし、そんな私が広告業界を離れ、ブランディングに軸を移した理由はたった一つ。
「広告だけでは成果を出すことが難しくなった」
この現実に気付いたからです。
福岡に移住した5年ほど前、当時は求人広告を扱っていました。
その中で主流だったのがIndeed。東京では当たり前に売れていたものが福岡に移住した途端、Indeedは怪しいもの扱いで苦労しました。それが今やIndeedを使うのが当たり前になっています。しかし、そのIndeedですら応募が集まらなくなっているのが現状です。たった5年です。5年ですよ。
何が言いたいかと言うと、広告だけでは企業の課題を解決できません。この気付きが、私を「ブランド」という本質的な課題に向き合わせました。
前置きが長くなりましたが、今回は「ブランド戦略」の重要性についてお話しします。特に地方の中小企業に向けて、次のような疑問に答えていきます。
- ブランディングやブランド戦略とは何か?
- 自社にブランド戦略は必要なのか?
- どのように考えればいいのか?
中小企業や地方企業が成長していく上で、ブランディングは「不要なもの」ではなく、「不可欠なもの」です。私が創業して4年間で得た実感をもとに、その理由をお伝えできればと思います。
Contents
地方中小企業が抱える現状
地方の中小企業にとって、「広告を出す」「営業を頑張る」という手法は、これまで効果的な売上アップの手段でした。何より地方は横のつながりが最強です。企業成長していく上で辿り着く先は「人と人とのつながり」であったり、「信頼、誠実」などに限ると私は思います。
しかしここ数年、そうした手法だけでは解決できない課題が目立ち始めています。その一つが、「ブランド価値を十分に伝えられない」という問題です。
広告を使うことをやめようと言っているわけではありません。
むしろ使いましょう。ただ、「使い方」が間違えているというのは強くお伝えしたいのです。
もっと言うならば、「会社や商品のいいところ」を伝えることをやめましょう。「ブランドのありのまま」を伝えてください。もう、ネット社会の現代ではありきたりな訴求では心に響きません。
こういったブランド価値を伝えきれていない企業は、競合他社との価格競争に巻き込まれやすく、事業の利益率が低下する傾向にあります。それだけではありません。ブランド価値がない企業は「人材」を惹きつける力も弱くなります。
人は、「この会社で働きたい」「この企業に携わりたい」と思うとき、給与や待遇だけでなく、企業が持つビジョンや価値観に共感しています。特に若い世代は、「何を売っているか」よりも「どんな想いで事業をしているか」を重視する傾向が強いのです。そのため、企業のビジョンやブランドストーリーが明確でない場合、人材採用はもちろん、社員のモチベーション維持や離職率の低下も難しくなります。
そして企業が持つブランド価値とは、単にロゴやキャッチフレーズだけではありません。
ブランディングとはロゴをつくったり、コンセプトを決めたりすることだと思われている方もいるかもしれませんが、全く違います。
「何を提供するか」という事業の本質だけでなく、「なぜそれを提供するのか」というビジョンや想いを含むものこそがブランドの価値です。そして、このビジョンに共感した人たちが、ファンとして顧客になり、また社員として会社を支えていくのではないでしょうか。
地方の中小企業が今後も成長していくためには、「売上」と「人材確保」の両輪をしっかり回す必要があります。その鍵となるのが、自社のブランド価値を見つめ直し、伝える力を磨くことなのだと私は信じています。。
なぜ「ブランド戦略」が必要なのか?
そもそも「ブランド戦略」は単なる流行のマーケティング用語ではありません。
ブランド戦略そのものは企業が成長し続けるために、今や不可欠な要素です。ただし、「ブランド戦略」という言葉が難しく感じられることも多いので、まずはその本質を整理してみます。
ブランディングとブランド戦略の違い
まず混同されがちな「ブランディング」と「ブランド戦略」の違いについて説明します。
- ブランディング:企業や商品が持つ価値や印象を、顧客や社会に伝え、感じてもらうプロセスのこと。ロゴやデザイン、広告表現などが具体例としては挙げられます。
- ブランド戦略:そのブランディングを支えるための全体的な設計図であり、「どんな価値を、誰に、どう届けるか」を明確にし、それを実現するための計画です。
つまり、ブランド戦略がない状態でブランディングを行うと、いくら外見を整えても中身が伴わず、効果が薄れてしまいます。逆に、ブランド戦略がしっかりしていれば、広告やデザインに投資する価値が最大化され、中長期的な成長が期待できます。
信頼と認知を高める効果
ブランド戦略が持つ最大の効果は、商品やサービスの価値を高めるだけでなく、「信頼」と「認知」を育てることです。企業が提供する商品やサービスそのものはもちろん重要ですが、それだけでは顧客に選ばれ続けることは難しい時代です。
ものづくり業界を例に出すと、価格競争がとにかく激しいですよね。私はいいモノが適切な金額で売れない今の価格相場はおかしいとすら感じています。単に「安いから選ばれる」「安い」という構図になりがちです。しかし、顧客にとって価格以上の「理由」を与えることができれば、競争に巻き込まれることなく、長期的な信頼関係を築くことが可能です。この「理由」がまさにブランドの力です。
ブランド戦略を通して「私たちが提供するものには、これだけの価値がある」と伝えられる企業は、顧客だけでなく社員や地域社会といったステークホルダーから信頼される存在になります。信頼が認知を広げ、認知がさらに信頼を強化するという良い循環を生み出します。これこそが地方の中小企業の在るべき姿でもあり美しいブランドだと私は感じています。
地方だからこそ必要な差別化と選ばれる理由
また、ブランド戦略は大企業だけが取り組むものではありません。むしろ、地方の中小企業にこそ必要な取り組です。地方では、価格や立地条件で勝負する企業が多く、他社との差別化が曖昧になりがちです。しかし、地域ならではの独自性を掘り下げ、それをブランド戦略として打ち出すことで、顧客に「選ばれる理由」を提供できます。
大手チェーン店やオンラインで何でも手に入る時代だからこそ、地方の中小企業が「なぜ自分たちを選ぶべきなのか」を明確に示すことが求められているのです。
私は数々の素晴らしい地方企業の商品、開発力を目の当たりにしてきたからこそ声を大にして言いたいのが、売れていない理由はブランド戦略にあり、ブランド戦略こそが企業の成長につながるんだと伝えたいのです。
成功例:ブランド戦略が企業を変えた事例
弊社のお客様の事例にはなりますが、大きな成功として2つ挙げたいと思います。
エリア含め詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
まず一つは士業。
皆さんは自分の業界の求人票、みたことありますでしょうか。
意外と自社の求人だけみて他社の求人は見ないものです。この士業というのは業務内容として「ほぼ、やってることは同じ」なんです。独自の業務フローくらいしか差別化ができず、働き方くらいしか差別化されていません。当時こちらのお客様も求人に悩まれており、分析したところ「求職者から選ばれる理由」が不透明でした。考えてみればそうですよね。ほぼ、やってることは同じとなれば給与面や福利厚生などで求職者は転職活動するほかありません。
そこでブランドのアプローチをしようとご提案し、ブランド戦略から徹底して行うことで「自分たちは何者なのか」をブランド定義して求人票に書いたところ、それだけで大きな差別化につながりました。
同じ広告手法、同じ広告費で20倍以上の費用対効果となり、県内で求職者が最も集まる士業になった成功事例です。
もう一つは製造業。
こちらのお客様は高い技術力をもち、業界内では大手からもその技術力に注目を浴びている存在でした。しかし自社商品の売れ行きがよろしくなく、B2BはうまくいっているがB2Cはうまくいっていない。そんな状況でした。
そこで弊社がアプローチしたのは自社ECサイト化。
ここで解決すべき問題は「B2Cでの収益化・黒字化」がイシューになるため、最も適したご提案が自社ECサイトでした。ブランド関係ないじゃんと思われるかも知れませんが、ブランド戦略はこのようなケースでも重要な手法です。
そもそも、技術力だけで人はモノを買いません。「技術を活かして完成したモノ」の価値を届けきれていなかっただけです。そして楽天やAmazonなど、更に激化している価格競争の市場に自ら参入して売ろうとしていることを全て販促戦略から考え直し、自社ECに1本化して、更に商品ニーズからも海外の方も視野にいれたブランド戦略を構築しました。この全体像こそがブランド戦略なのです。
こうした取り組みの結果、1年経たずして約3倍の売上で黒字化。簡単に書いていますが、もちろん簡単なことではありませんでした。しかし、施策を間違えなかったという事実がこの結果に結びついた最たる要因です。
ブランド戦略を始めるためのステップ
ブランド戦略は、一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、正しいステップを踏むことで確実に企業の成長基盤を強化することができます。弊社が基本としているブランド戦略を始めるための4つのステップを具体的に解説します。
STEP1.自己理解:自社の強み、ミッションを明確にする
ブランド戦略のスタート地点は「自己理解」です。多くの企業が陥りがちな落とし穴は、自社の特徴や強みを漠然と理解しているだけで、具体的に言語化できていないことです。営業トークが最たる例。同じ商品なのに、人によって訴求ポイントが違うのはなぜでしょうか。トークスクリプトのせい?営業個人のスキルのせい?いえいえ、自己理解が足りていないだけ。これは企業の責任です。
以下の質問を深掘りすることで、自己理解を深めてください。
- 自社の強みは何か?
他社には真似できない「独自性」は何なのか?製品の品質、価格、サービスの対応力、地域性などを洗い出してみましょう。 - なぜその事業をしているのか?
自社が存在する理由(ミッション)を明確にします。これがブランドの核となり、顧客や社員に共感される軸となります。 - 自社のビジョンは何か?
どんな未来を目指しているのか?短期的な目標ではなく、長期的な理想像を描くことが重要です。
これらの問いに答える中で、顧客に響くストーリーが見えてきます。そのストーリーこそが、ブランド戦略を形づくる基盤となります。
STEP2.市場分析:競合やターゲットを把握する
自己理解を深めた次に必要なのは「市場」を理解することです。ブランド戦略は独りよがりでは機能しません。競合や顧客を知り、戦略を現実に即したものにすることが求められます。
- 競合分析
同じ市場で戦っている競合をリストアップし、その強み・弱みを調査します。特に「何を強みにしているのか」「どんな顧客層に支持されているのか」を分析しましょう。 - ターゲット顧客の明確化
自社の理想的な顧客像を定義します。具体的に「年齢」「性別」「ライフスタイル」「購買動機」などを明らかにし、顧客が求めている価値を探ります。 - トレンドの把握
業界や顧客のニーズは日々変化しています。最新のトレンドを押さえることで、ブランド戦略の方向性を未来に向けたものにできます。
競合や市場を正しく理解することで、自社のブランドがどのポジションを目指すべきか、具体的な方向性が見えてきます。弊社はこの部分に圧倒的にリソースを割いています。ブランドの成功のカギは、お客様が答えをもっていると信じているからです。調査・分析力には自信があるので第三者目線で自社を分析してほしい場合はお気軽にご相談ください。
STEP3.価値提案:ブランドとして提供する価値を整理する
ブランド戦略の要となるのが「価値提案」です。価値提案とは、顧客に「自社を選ぶ理由」を明確に示すことです。次の3つの要素を軸に整理してみましょう。
- 機能的価値
製品やサービスが具体的に「何をしてくれるか」。例えば、時間を短縮できる、コストを削減できる、便利であるといった機能的なメリットです。 - 感情的価値
顧客が自社やブランドを通じて「どんな感情を得られるか」。安心感、信頼感、満足感など、感情的なつながりを構築する要素です。 - 社会的価値
自社のブランドが「社会にどのような影響を与えるか」。例えば、地域貢献やSDGsへの取り組みなど、顧客が共感する社会的意義を含みます。
このように価値提案を整理することで、自社ブランドが顧客にとって「唯一無二の存在」であることを明確に伝えられるようになります。
STEP4.実行計画:マーケティングやコミュニケーション戦略と連携
最後に、ブランド戦略を現実に落とし込むための「実行計画」を立てます。戦略だけでは成果は出ません。それを具体的な施策に落とし込み、実行する仕組みが必要です。
- 短期・中期・長期の目標を設定する
ブランドの認知を広げる、リードを増やす、採用を強化するなど、具体的な目標を期間ごとに設定します。 - チャネル戦略を策定する
顧客に価値を届ける手段(SNS、広告、ウェブサイトなど)を選び、それぞれの役割を明確にします。 - 社内外の関係者を巻き込む
ブランド戦略は、経営者だけの課題ではありません。社員や協力会社など、すべての関係者が同じビジョンを共有することで、ブランド価値を統一的に発信できます。いわゆるインナーブランディングとも言われますが、私はこの部分が最も難解であると考えています。そしてブランディングの失敗は、ここに詰まっているとも感じています。 - PDCAサイクルを回す
一度で完璧なブランド戦略を作る必要はありません。実行しながらデータを集め、改善を重ねることで、ブランド戦略をブラッシュアップしていきます。
これらのステップを丁寧に進めることで、単なる「企業」から、顧客にとって「共感されるブランド」へと進化することができます。ブランド戦略は一見複雑に見えますが、一歩ずつ取り組むことで必ず成果に結びつきます。ぜひ、自社の未来を形づくる第一歩として、このステップを実践してみてください。
未来のために、ブランド戦略を当たり前に。
私が地方の中小企業の皆さまにお伝えしたいこと。
「ブランディングは大企業だけが取り組むもの」という考えを、今日で手放してください。
むしろ、限られた資源で戦う地方企業だからこそ、ブランディングの力が必要なのです。
大規模な広告予算や人材がなくても、自社の強みや価値を見つめ直し、それをしっかりと伝えることで「選ばれる理由」をつくることができます。それがブランド戦略の本質であり、企業の成長を支える柱となります。
地域の特性や文化を活かしたストーリーづくりは、大企業には真似できない地方企業ならではの強みです。それを武器にすることで、価格競争に巻き込まれず、顧客との深い信頼関係を築くことができます。
ブランド戦略は、「何を売るか」ではなく、「なぜ売るのか」を伝えるための手法です。小さな企業でも、この第一歩を踏み出すことで、大きな変化をもたらすことができます。
また、単に売上を伸ばすための手段ではありません。企業の未来をつくるものです。
これからの時代、価格競争や広告だけに頼る経営は限界を迎えています。顧客や社員、地域社会といった多くの人々に「選ばれる存在」となるために、ブランド戦略を通じて自社の価値を再定義してください。
ブランド戦略という新たな挑戦を、ぜひ一緒に始めていけると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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