経営者の頭の中を整理する90分|「やめること」を決める戦略が福岡の中小企業を救う
こんにちは。株式会社World Scene代表の荒武です。
私たちは福岡市を拠点に、地元の中小企業に広告依存に陥らない集客の仕組みを整える伴走支援をしています。
今日は、私たちの展開するサービス「OHIZAMOTOプラン」で毎月行う90分の整理セッションについて、実際の現場感とデータの両面からお話します。
1. 経営者の「あるある」は、ほぼ構造問題だ
- やるべきことは分かっている。でも、どれが成果に直結するか分からない。
- やることが多すぎて、結局どれも中途半端になる。
- 打ち合わせのたびに言うことが変わってしまい、社員に指摘される。
福岡でも九州でも、経営者と話すとほぼ必ず出てくる悩みです。
背景には資材・人件費の上昇、円安、金利上昇、恒常的人手不足といった外部要因があり、中小企業の経営環境は構造的に厳しい。これは中小企業白書(2025年)でも明確に述べられています。(参照:経済産業省)
厳しい環境の中で「とりあえず広告を回す」「イベントに出る」「SNSに毎日投稿する」といった施策を増やす行動になりがちですが、優先順位がないまま施策だけ増える状態は、じつは組織の消耗を加速させます。
2. 広告は点火剤。止めた瞬間にゼロへ戻るのは仕組みがないから
広告は即効性がある。これは事実です。
ただ、広告を止めた瞬間に売上がゼロへ戻るケースを、私は福岡で何度も見てきました。
事例:食品メーカー(広告費50万円 → 売上1万円)
新商品の販促で毎月50万円を広告に投じた食品メーカー。
序盤は売上が伸びるものの、月を追うごとにROASが悪化し、最悪期には「広告50万円 → 売上1万円」。相談に来た社長は、か細い声で「もう何をすればいいか分からん」と。あの表情は、今でも忘れられません。
この現象は食品に限りません。
- 工務店:イベント当日だけ賑わって、翌週にはゼロ。
- 美容室:Instagram広告で新規は来るが、広告を止めた瞬間に来店が止まる。
- 製造業:展示会で名刺は集まるが、継続商談に乗らない。
共通点は広告が悪いのではなく、「広告以外の仕組み」を持たずに依存してしまっていること。
実際、日本の広告費は2024年も過去最高の7兆6,730億円(前年比+4.9%)、特にインターネット広告が全体の47.6%と伸びています。企業は広告に投じ続けているのに、中小企業の現場は疲弊している。ここに構造のねじれがあるわけです。(参照:電通)
さらに、広告効果は出稿を止めると減衰することが計量的にも知られています(いわゆるアドストック効果)。一般に広告の効果は半減期(ハーフライフ)で逓減し、数週間〜数か月で基線へ戻る。つまり打ち続ける前提のメディアなのです。(参照:ウィキペディア)
- だから、広告の蛇口をひねるだけでは会社は強くならない。
- 蛇口の先につながる水道管=仕組みをつくる必要がある。
私はずっとこのことをクライアントには言い続けています。そしてその実現に向けたマーケティングを実装しています。
3. 90分の「整理セッション」で起きること
私たちは90分で何をしているのかという話をします。
ある打ち合わせ中に社長に私は尋ねました。
「それって、会社のビジョンに向かえていることなんですか?」
次の瞬間、メモを走らせていた手が止まり、部屋に沈黙。けれどその沈黙は、未来をよくするための沈黙でした。戦略は滑らかに出てくるものではない。立ち止まり、捨て、選ぶプロセスが必要です。
認知からリピーター戦略への転換
別の会社では、新サービスの拡販で「どう認知させるか?」ばかりが議論に。インフルエンサーや広告の案が並びました。
でも、顧客の購買行動を丁寧に洗い直すと、認知不足ではなく「リピート不足」が真因だと判明。そこで認知施策は一旦やめ、既存顧客の定着に全振り。使った広告費はゼロ。
それでも口コミと仕組みだけで新規と売上がじわじわ伸びた。社長は笑って「戦略勝ちやな!」と言っていただけました。
4. データが示す「広告依存の限界」と「仕組み化の必然」
4-1. 広告は短期で効き、止めると減衰する
広告の効果は投下直後に立ち上がり、出稿停止後は逓減します。
半減期は数週間〜数か月のレンジという報告が一般的です。
出し続ける前提のメディアなので、仕組みのない広告依存は家計の蛇口。止めればゼロ戻りは自然現象です。(参照:ウィキペディア)
4-2. マーケ担当の広告不満は4〜5割水準
国内の複数調査で、運用型広告への不満や課題感が4〜5割規模で報告されています。
要因は人材・ノウハウ不足、検証体制の未整備、無駄な支出など。広告だけで勝ち切るのが難しい現実が透けて見えます。(参照:PR TIMES記事)
4-3. リテンション(再購買)は利益に直結する
古典的ですが、Bain & Company の研究で「リテンションを5%高めると利益が25〜95%伸びる」とされます。
端的に言えば、新規獲得の火力(広告)だけでは利益が積み上がらない。顧客が続けてくれる仕組みが利益を生む。(参照:hbr)
4-4. 経営環境は厳しく、施策の“選択と集中”が必須
円安・価格上昇・人手不足など、中小企業に逆風が続くのは政府白書でも示される現実。
だからこそ、「なんでもやる」のではなく「やめることを決める」という経営判断が、以前にも増して重要です。(参照:経済産業省)
5. 私たちが90分でやることはやる前に、捨てる
集客や売上を上げるために何をするのかと考えたときに、基本的には「やることを決める」というのが自然な流れかもしれません。ただ、「やることリスト」に施策を足すのではなく、まずやめることリストを作る。ここから始めます。
典型的なカット例はこうです。
- とりあえず広告をやめる。最低限の出稿は維持しつつ、余剰を基盤(仕組み)に回す。
- 媒体ごとのお作法をやめる。目的に効かないKPIの追走は停止。
- 丸投げ制作をやめる。誰に・なぜ・何を・どう届けるかを言語化してから作る。
結果として残るのは、数は少ないが、勝ち筋に直結する施策だけ。だから続けられるし、学習が効く。
ある社長の言葉を借りれば、
「結局は、どんな施策を選ぶにしても地道にコツコツと継続することが一番成果に直結するね」
本質はここに尽きます。
6. 広告ゼロ戻りから抜け出す、仕組みの作り方
6-1. 広告費の使い方を変える(食品メーカーの回復)
完全ゼロにせず最低限は維持。浮いた予算を中長期の資産化へ再配分。
- YouTube:広告出稿ではなく自社チャンネル運営へ。
- SNS:代理店任せをやめ、社員が顔を出す運用体制に。
- オウンド(コラム/SEO):検索導線を積み上げる。
正直、最初の5か月は無風でした。でも6か月目に自然流入の問い合わせが発生し、以降は右肩上がり。広告費は減らしたのに、売上は伸びる。点火剤から、燃料(基盤)への転換が効いた典型です。
6-2. 認知より再訪(定着)を優先(BtoCサービス)
認知施策をすべて止め、既存顧客の再訪と紹介に全振り。キャンペーン設計と顧客体験のチューニングに集中した結果、広告ゼロでも新規が増える状態に。Bainの示すリテンション効果を、現場で体感した案件でした。
6-3. 工務店のイベント→ゼロ戻りからの脱出
イベント依存をやめ、施工ストーリーの分解(Before/After・判断基準・職人の技)を毎週コンテンツ化。検索とSNSでの発見性が上がり、毎月2〜3件→1年で月10件の相談へ。熱量×継続は裏切りません。これはマーケの鉄則です。
7. 理解者としての発信が、最も強いマーケティング
データで補強しつつも、最後に残るのは人の納得です。
- 代理店のレポートを見て「で、何すればいいの?」で終わる。
- 社内にノウハウがなく、検証のループが回らない。
- 一生懸命発信しても、誰に・なぜがないから刺さらない。
この「あるある」を他人事にせず、経営者の言葉で発信する。
つまり、理解者として語る。それが採用でも営業でも、最も強いマーケティングになります(ここは福岡の現場で、何度も見てきた真実です)。
8. まとめ|広告の蛇口より、水道管をつくる
- 広告は点火剤。止めれば効果は逓減するのが自然(アドストック)。(参照:ウィキペディア)
- 日本全体でも広告費は過去最高だが、中小企業の現場は人材・検証不足で広告依存のリスクが高い。(参照:電通)
- 90分の整理でまずやめることを決める。残す施策は少数精鋭に。
- リテンション(定着)は利益に直結。広告だけでは会社は強くならない。(参照:hbr)
福岡・九州の中小企業が生き残るには、広告の蛇口をひねる前に、水道管=仕組みをつくること。
それが、私たちWorld Sceneの伴走で一番大切にしていることです。
OHIZAMOTOプラン|ご相談はこちら
World Sceneでは、広告やデザインを打つ前に、経営者の頭の中を整理する90分から伴走します。
「やめること」を一緒に決めて、勝ち筋に資源を集中する。そこから仕組みづくりへ進みます。
- ホワイトペーパー(無料ダウンロード) ▶︎ 集客の構造
- 関連note ▶︎ 広告をやめた瞬間、売上がゼロに戻る理由
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